防虫蚊帳の話

で、「農薬蚊帳」配布反対キャンペーン
まず、「マラリア対策に農薬入りの蚊帳を普及させることの問題点」の論理構成が気に食わない。

  • 「農薬蚊帳」という名称で農薬の怖さとの連想づけを行おうとしている。一般には「防虫/殺虫剤入り蚊帳」。(確かに農薬として使われることもあるが、この場合は用法としておかしい)
  • 天然成分であるピレスリンと比較して人工的な合成化学物質としている。しかも最後で天然ならば安全と受け取れるような記述がある。(毒性に天然も人工も関係ない)
  • ペルメトリン有機塩素系化合物であることを引き合いに出して、同じく有機塩素系化合物であるDDTの毒性を説いている。(DDTの話は今回の論旨とは全く関係がない)

これらは典型的なプロ市民の手法で、こういう論理構成をとっている時点でこの文章に対する信頼性は著しく下がると言わざるを得ない。
その上で、反対キャンペーンでは防虫蚊帳に以下のメリットがあることを無視している。

  • 普通の蚊帳では蚊を殺すことはできない。防御はいいが攻撃ができないので片手落ち。
  • 防虫蚊帳は洗っても効果が落ちない。5年はもつとのこと。メンテナンス不要というのは途上国では大きなメリット。
  • 侵入しようとした蚊を殺すので、網目をぎりぎりまで大きくすることができる(普通の蚊帳2mmに対して防虫蚊帳4mm)。そうすると風通しがよくなる。
  • 網目を大きくすることができるので繊維も太くすることができ、普通の蚊帳よりも丈夫で長持ち。

もちろんデメリットもあって、「高い」というのは確かに指摘の通りだろう。
早く効果を上げるために安くたくさん作ってとにかくばら撒いた方がいいというのも考え方としてはありかと。
ただし、普通の蚊帳+蚊取り線香(随時供給するための人件費等も含む)よりも高いかどうかは分からない。この辺のトータルでの検証は抜け落ちている。
以上より、おそらく両者併用で最終的に防虫蚊帳にシフトぐらいが最適解ではないかと思われる。
現状の通り政府レベルでは防虫蚊帳を配布し、草の根レベルで普通の蚊帳を使っていけばいいんではないでしょうか。
<2008.9.1追記>
匿名ダイアリーからリンクされてるのでちょっぴり補足。
上記で書いたのは「プロ市民的手法」であって、それを使ったからといって彼らがプロ市民であるというわけではない点には注意願いたい。彼らの素性なんかも調べてませんし調べるつもりもないです。仮にも論文ならその内容で語れっつーことで。