続・防虫蚊帳の話

以前のエントリ「農薬蚊帳」配布反対キャンペーンに対する批判めいたものを書いたんですが、久しぶりに見たら性懲りもなく「マラリア予防用の蚊帳に殺虫農薬練り込みは危険だ」という文章がアップされていました。
また突っ込んでみます。
冒頭で出雲市の殺虫剤中毒事件との関連を挙げていますが無理がありすぎ。
浴びた農薬の量も条件も化学物質の名称すらも違う。これをもって関連があるというのは、「テレビがたまたま火を噴いたから電気製品はすべて使用禁止にしろ」というのと同じレベルです。

筆者は1970年頃から熱帯地区の約30ヵ国と関わるようなって蚊帳との縁は現在まで約40年間続いているが、まだ一度もマラリアにはかかっていない。

でしょうね。けっこうなことです。しかし、個人の経験というのは論理の補強にはなりません。まあ、これは論文ではないからそれでもいいんですけど。
次。
普通蚊帳使用と蚊帳無しの各農家でのマラリア罹患状況が表にまとめられていますが、統計として意味をなしていませんね。母集団はいったいいくつなの?という一番基本的なことすら書かれていない。統計学をナメてるとしか思えません。
防虫蚊帳の効果については前に書いたので省略。住友化学に聞くまでもなくググれば分かる話です。明確な説明がないとか言ってちゃんと聞いてないだけじゃないの?
毒性に関する突っ込みはこの辺の記事にお任せしますが、借りてきた情報そのまま乗せましたって感じですね。それでも素人はあっさり信じるとでも思っているんでしょうか。
耐性の問題については指摘の通りかと思います。耐性があっても忌避効果までは失われないから問題ないんじゃね?っていう話もありますが、検証されてないからこの辺は分からないね。

ペルメトリンの浸漬残液が川に流れ多量の魚類が死滅したことである。

防虫蚊帳でそういうことが起きるんでしょうか?起きませんよね。ただ煽ってるだけで無意味。

いま、住友化学製の農薬蚊帳オリセットを配布されたアフリカの農家では、蚊帳に練りこまれた農薬ペルメトリンに関する知識は全くない。夜間、蚊帳の中で過ごす裸の子どもたちが蚊帳の裾に体を巻きつけたり、中には裾を口に入れてしゃぶることが予想される。

農薬の知識を刷り込むとか無理でしょ。それよりもむしろ使い方の問題で、普通の蚊帳だってこういう使い方をしないと効果がない、とか教えるでしょう。同じようにそういう使い方をしないように教えればいいんでは?
それとも知識のない人々には多少なりとも危険(かもしれない)ものは使わせるなと言うのかしら。
あと、仮にも農薬の専門家を名乗るなら裾を体に巻き付けたり口に入れたりしたらどの程度やばいのかを書いてほしいなあ。ペルメトリン脂溶性らしいから素人目には特段やばそうに思えないんですが。

農薬メーカーには過去の薬害の歴史に学ぶ謙虚さが求められる。

ごもっとも。だからといって根拠不明な言いがかりに近い文章を公表していい理由はありませんけどね。
いやさ、実際のところメーカーに対する監視は必要だと思うよ?それがNPOの役割でもあるのに、こんな文章しか書けないんじゃ話にならんですよ。その辺の素人じゃなくて、せっかく「農薬の専門家」なんだからもっときっちりした調査に基づいた事実の積み上げによる文章が書けるはずじゃないんですかね?
農薬を使わせたくないからこういう文章を書いてるんでしょうけど、こんなレベルでは逆効果もいいところです。
 
おまけ。
サパの掲示板

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妥当性や条件を自分たちなりにかみ砕いていない。ただ手当たり次第貼っただけ。だからあっさり反論されるw

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あたりはやっぱりプロ市民的だなあ。
#愛護とかの掲示板に行くとこの手の自称「論者」がゴロゴロしてますw